新しい年に新しい歳神を迎え、一年の無事と繁栄を祈る。
日本人は忘れつつありますが、日々の暮らしの中における無意識下の伝統的な価値観、習慣のおかげで、世界の国々と比較しても我々はそれらによって守られている気がします。
変わっていく時代に子や孫の世代に想いを馳せ日本人としての不変を取り入れる。
きっかけとして最もふさわしいお正月。
お正月を豊かに過ごすための令和のアレンジを加えた輪島屋善仁による優品をご案内致します。
■日本人が最も日本人に立ち返るお正月
お正月は日本人が最も日本人に立ち返る行事ではないでしょうか。
初詣、初日の出、お年玉、おせち料理、お雑煮、餅つき、凧揚げなどお正月をイメージするとたくさんの言葉が出てきます。
昨今は海外で新年を迎えることも当たり前になって参りましたが、それすらも日本人にとって最高のハレの日に最高の喜びを得たいという正月を特別な日と認識している表れではないでしょうか。
2021年のお正月は例年とは違う過ごし方をされる方が多いと思います。
このような状況の中、新しい年を迎えるにあたり、日本本来のお正月の暮らしかたをほんの少し取り入れてみるのは如何でしょうか。
■輪島屋善仁
輪島屋善仁は江戸・文化年間(1813年)創業。以来200余年、職人は「人格崇高たるべし」との家訓のもと、技術と感性の向上を求める風土を育んできました。
最良の器は、精緻な技を持つ名人・名工の分業のリレーにより誕生します。名品はそれらを取り締まる漆芸プロデューサーの審美眼、理念、文化力によって決まります。輪島屋善仁は当主自らが漆芸プロデューサーとして、素材、技術、意匠を監督することによって一貫した理念を製品に反映するよう努めています。
今日、明治初めと比べても日本産漆の生産量は激減しています。一般に生活環境の変化が衰退原因の第一とされていますが、漆器製作の現場に漆の本質を追究して現代に投影する精進が足らないのでは、と小社は考えています。現代のものづくりが、過去と比べて見劣りするようでは未来はありません。
時代を超えて日本漆芸史上最良のものづくりを目指すのが輪島屋善仁のテーマです。
■正月の食
長い歴史に加え、国土は南北に長く気候も地方によって全く違うのでその風土による習慣は様々。
ほんの一例ですが忘れかけている日本のお正月についてご案内致します。
・おせち料理と重箱
正月に神に供える供え物を『節供(せちく)(節句)』といいます。
『節』とは、神を祀る日を指しますが、その中で正月が最も重要な節にあたり、歳神に供える料理が『節句料理』 → 言葉が詰まって『おせち料理』となりました。
おせち料理を入れる重箱は四季を表す四重が正式とされています。
お重は上から、「一の重」、「二の重」、「三の重」、「与の重」と呼びます。
古くから伝わる重箱の使い方は地方によって少しずつ異なりますので、
あくまで一例にすぎませんが、どの段にどの料理を入れるかも決まっています。
一の重は「祝い肴」・・・黒豆、数の子、田作り、紅白かまぼこ
二の重は「口取り肴」・・・きんとん、伊達巻き、昆布巻きなど甘いものや、紅白なますなど酢の物
三の重は「焼き物」・・・海老の塩焼き、ブリの照り焼き、イカの松笠焼きなど海の幸
与(四)の重は「煮物」・・・野菜のお煮しめや筑前煮など山の幸
・屠蘇と屠蘇器
一年中の邪気を祓い、息災延命を願って飲むお酒を『屠蘇』といいます。
元来は中国の風習で、『鬼気を屠絶(とぜつ)し人魂(ひとだま)を蘇(そ)生(せい)させる』ということに由来しています。
薬草を絹の袋に入れて、酒やみりんに浸して作ります。
お正月に飲む日本酒=屠蘇と思っていらっしゃる方が多いですが、現代でも『屠蘇散』という屠蘇の元が販売されており、水やお酒に溶かして飲むこともあるようです。
屠蘇器は屠蘇台、銚子、盃、盃台で構成されています。
注ぐ時は二度注ぐ形をして三度目に注ぎ、飲む時も二度口をつける形をして、三度目に飲みます。
この時、屠蘇を飲むのは年少者から年長者へ。
年齢の低い者から飲む風習は、年少者の若さを年長者へ伝える為といわれております。
・雑煮と蓋付汁椀
雑煮とは、正月三が日に食べる正式な食べ物で、大晦日の夜に歳神に供えたものを、元日の朝におろし、ごった煮にして神と共に食べるものでした。
雑煮は名前の通り、雑多なものを具にすることに由来します。
食べるときは、柳箸(柳の白木でつくった太めの箸)が使われます。
柳は、枝が水面に垂れて水の精気にふれていることから、聖なる木とされています。
その柳箸を使って厄を祓い、1年の無地息災を祈ります。
蓋付椀はその名の通り、汁椀に蓋が付いたものです。
蓋によって温かいものが冷めにくいというメリット以外に、蓋をあけるときのワクワク感、蓋を裏返して使えばお皿になるという食を楽しむ上で非常に優秀な形状です。
■吉祥の文様
我々の先祖の切なる想いから自然、暮らし、祈りの中で見つけた吉祥の数々。
文様に置き換え、身近に置くことで心の豊かさも得ることが出来たのではないでしょうか。
宝尽くし・・・宝尽くしはこの上ないめでたさを表し、縁起の良い物を寄せ集めた文様です。
扇面・・・扇は末が広がっている形状から吉祥文として用いられた文様です。
群鶴・・・鶴は千年生きるとされて瑞鳥として尊ばれ、限りないめでたさを表す文様です。
葡萄・・・葡萄は身が多いことから、子供が多いことに例えられ、子孫繁栄を象徴する文様です。
■g GIFT AND LIFESTYLEとしての不変への取り組み
日本人として日本の文化、伝統を次の世代に適応した状態で残したい。
保管を目的としてただ残すのではなく、日々の生活を豊かにする品として残す。
その一つとして縄文時代から続く漆文化は日本人にとって変える必要のない文化です。
漆器を使う人が減っている。
普段から使っている方からすると実感が伴わない言葉だと思います。
しかし実際に漆器を使わない、または使ったことがない人が増えています。
もちろん、使う使わないは必要性の有無であり個人の自由です。
ですが、漆器があることで食事が豊かになるなど知らないままに、
使う機会を失うのはあまりにもったいないことと考えます。
伝統に真正面から向き合っている作り手の方々の知見をお借りして本質をお伝えする。
それを知っている方には担い手に、知らない方には新しい発見を提供する場とする。
不変な暮らしをご案内して参ります。