福井県出張1日目

福井県出張1日目

ー第4回目の福井出張手記:森國清廣氏との出会い 1日目ー

 

朝、東京は小雨でけだるさが漂っていたが、新幹線に乗り込んで約2h

富山あたりから車窓に晴れやかな景色が広がり、まるで歓迎されているような気分に。

福井駅に降り立つと、以前よりも増えた恐竜たちが賑やかにお出迎え。

4回目ともなると、まるで「帰ってきた」ような感覚さえ覚えた。

 

駅前で伝統工芸家の西村さんと合流し、刀鍛冶の森國清廣さんを訪ねる旅。

森國さんは、幕末から途絶えていた越前打刃物の伝統を現代に復活させた重要な人物である。

刀鍛冶としての技術は国からも高く評価され、「現代の名工」※1として認められている。

また、現代の刀匠が技を競うコンクール「新作名刀展」※2で高松宮記念賞を受賞されていらっしゃいます。

刀匠という方とお会いしたことが無いので、イメージばかりが膨らみがちでしたが、車窓から見えるのどかな里山の風景を愉しみつつ到着すると、こちらの勝手なイメージを覆す、グリーンが印象的なモダンなプレハブ倉庫のような工房で、伝統と現代的な要素が共存していました。

 

 

 

緊張しながらも森國さんにご挨拶すると、彼は驚くほど気さくで、我々のような素人にも熱心に刀鍛冶や福井への思いを語ってくれた。

なんと2時間以上も。

熱いお気持ちの森國さまのお話を皆様と共有したいと思います。

 

 

・刀の製造過程と歴史的背景

私の刀鍛冶技術は、古代から受け継がれた製法を強調しています。使用する材料や鍛造技術は昔ながらのもので、特に木炭の加熱や「折り返し鍛錬」、「玉鋼」の利用が刀の強度と鋭さを実現しています。

 

・材料と製法

玉鋼はたたら製法で作られ、主に島根県の北出雲町で製造されています。

この技術は炭素量が異なる部分を選別し、適切な硬さを持つ材料を使用します。

 

・鍛造技術と職人の経験

鍛造では鉄の状態や温度管理が重要で、熟練した職人が炎の色や鉄の状態を観察し、炭素量や硬さを見極めます。

これらはすべて職人の経験に依存しています。

 

・現代における課題

現在、弟子を取ることが難しく、技術の継承が困難になっています。

また、刀を鍛えるための道具を作る職人も減少し、入手が難しくなっています。

 

・伝統技術の維持と文化

GHQの影響で製作が停止した時期もありましたが、日本刀は和鉄でしか作れません。

刀は武器だけでなく、美術品や御神体としての側面も持ち、製作には許可が必要です。

 

近年、従来の技術を用いる職人が減少し、特殊鋼材を使うスタイルが増えています。

福井では刀の文化が薄く、私はその伝統を守り、技術を継承するために努力しています。

若い世代には厳しい現実が待ち受けていますが、刀の魅力や文化を大切にし続けることが私たちの使命です。

 

刀を作る過程や、刀鍛冶の厳しい現状についても話してくれた。

特に印象的だったのは、年間24本しか刀を販売できないという法律や、若手の刀鍛冶が厳しい生活を強いられている現実だった。

 

森國さんは、売れること以上に、刀が美術品として理解され、大切に鑑賞されることに重きを置いている。

その情熱的な姿勢に我々も感化され、自分たちの文化を深く理解することの大切さを再確認させられた。

 

今回の訪問の目的は、福井県g KEYAKIZAKAでのイベントに森國さんに参加していただくこと。

そして将来的にはミラノでの展示も視野に入れた打ち合わせだった。

商業的な話もさることながら、森國さんの刀を通じて文化の価値を広める姿勢には心から感動し、イベントでの参加をご快諾いただけたことは大きな成果だった。

 

これからも引き続き、森國さんの刀を通じて福井の伝統文化を広めていく機会を楽しみにしている。

次回の訪問や展示の進展についても、ぜひお楽しみにしていただきたい。

 

 

1 現代の名工制度について

「現代の名工」は、厚生労働省が毎年優れた技能を持つ技術者を表彰する制度です。

この制度では、各分野において卓越した技術を持ち、長年にわたりその技能を磨き続け、社会に大きく貢献している職人や技術者が選ばれます。

彼らの技能は日本の文化や産業を支える重要な要素であり、その技術を次世代に継承していくことも期待されています。

 

この称号は、日本の伝統工芸、製造業、建築、食文化など、多岐にわたる分野で活躍する専門家が対象となり、彼らの努力と献身が認められるものです。

技術の精度や工夫、そして持続的な努力が「現代の名工」としての評価につながり、技術の継承と発展が推進されています。

 

2 現代刀職展について

 

「現代刀職展」は、日本の伝統的な刀鍛冶の技術と美術性を紹介する展示会です。

この展覧会では、全国の優れた刀匠たちが手掛けた美術刀剣や作品が一堂に会し、その卓越した技術と芸術的な表現が披露されます。

 

刀剣は単なる武器ではなく、長い歴史を持つ日本文化の象徴でもあります。

現代の刀鍛冶たちは、古来の技法を継承しながら、現代の感性や技術を取り入れた作品を制作しています。

展示会では、刀の精緻な美しさや、研ぎ澄まされた技術を見ることができ、刀剣を通じて日本の伝統文化の深さを感じられる貴重な機会です。

 

また、刀鍛冶の制作過程や道具の展示、作り手との対話の場も設けられ、刀に対する理解を深めることができます。

刀の芸術性と職人技を目の当たりにできるこの展示会は、刀剣愛好家や日本文化に興味のある方々にとって見逃せないイベントです。

 

ー2日目に続くー

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