ー第4回目の福井出張手記:アートと伝統工芸品の融合 2日目-② ー
続いては福井工業大学へ。
母校というわけではないけれど、大学という施設に足を運ぶのは実に30年ぶり。
懐かしい空気が漂うキャンパスに一歩足を踏み入れ、ふくいアンテナショップ291プレミアムの3回目のテーマ「アートと工芸との融合」について、”AsCアーツ&コミュニティふくい”の浅野さまと坂田さまと打合せを行うことになりました。
打合せが始まると、浅野さまと坂田さまの温かい笑顔に迎えられ、会話はすぐに和やかな雰囲気に包まれました。
最初の話題は「越前和紙の定義」でした。
浅野さまは、越前和紙として作品を発表することに違和感を感じているとのこと。
この点について、坂田さまは伝統的な工芸品としての越前和紙と、ブランドとしての越前和紙の2つの側面が存在することをご説明いただきました。
ブランド化された越前和紙が現代においてどのように位置づけられるべきか、新たな命名や発信方法を模索する必要があるという結論に至りました。
私も、「越前和紙の文脈の中で新しい名前をつけるか、あるいは問いかけとして提示することで、より深い意味合いを持たせることができるのではないか」と提案し、話が広がっていきました。
越前和紙の歴史や技術とアートとして新しい作品が生まれる文脈について深い議論が交わされ、その素晴らしさに改めて感銘を受けました。
次に、展示方法についての議論に移りました。
浅野さまの作品構想は、漉いたばかりの和紙を福井県内のあらゆる箇所に貼り付けて乾いた後、剥がす。
剥がした和紙には写し取った壁、地面、柱、その他様々なモノが経てきた空気や質感の魅力を最大限に引き出す効果的な手法だと強調されました。
『福井県の空気』を持ってくると表現されました。
また、作品サイズについても話し合われ、900×900mmの大きな作品からA3サイズの小さな作品まで、多様な展示が計画されていることが確認されました。
展示の際にはフレームを付けず、購入者の要望に応じて額装する柔軟な対応も可能であることが共有され、実際の展示がますます楽しみになりました。
最後に、展示の記録の重要性についての話し合いがありました。
坂田さまは、展示物の制作過程や展示の準備の記録をしっかりと残すことが後々のプロモーションに役立つと強調され、浅野さまもこれに賛同。
私も、今後の広報活動やドキュメント制作に向けて、具体的な記録手法の検討が必要であると述べ、次のステップに進むことになりました。
今回の打ち合わせでは、アートと工芸の融合というテーマに対する具体的なアプローチが整理され、今後の取り組みに向けた道筋が見えてきました。
この打合せは、単なる話し合いではなく、アートと工芸の未来を探る大切な時間でした。
浅野さまと坂田さまが活動されている”AsC アーツ&コミュニティふくい”(AsC:Art Space Communication Fukui)は、アートを通じて地域社会とのつながりを深める場として、福井県内外のアーティストや工芸作家とのコラボレーションを推進しています。
その活動は、アートを身近に感じられるイベントや展示、ワークショップの開催、さらには伝統工芸を次世代へとつなげるための様々な取り組みを展開しています。
終始和やかな雰囲気の中で進んだこの打合せは、アートと伝統工芸が互いに影響を与え合い、新たな創造の可能性を広げる未来に向けた道筋を描く貴重な時間となりました。
ー福井出張編 完ー